
「ハードな筋トレで汗を流した後の、冷たいビールは最高!」
とトレーニング終わりの一杯を楽しみに、日々のトレーニングを頑張っている方も多いのではないでしょうか。
しかし、結論から言うと筋トレ後のアルコール摂取はせっかくのトレーニング効果を台無しにするだけでなく、最悪の場合は筋肉を減らしてしまうことが複数の科学的研究によって証明されています。

と思っている方も要注意。
じつは、タンパク質をしっかり補給していても、アルコールの悪影響は相殺できないことも分かっています。
この記事では、1日にストロング系チューハイを最低5本飲むほどのガチアル中だったボクが、お酒が筋肉に与える影響を最新の研究データをもとに徹底解説。
「どうしてもお酒が飲みたい!」という方のために、筋肉への悪影響を最小限に抑える具体的な飲み方のコツも紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください!
【目次】
結論:筋トレ後のアルコールは「筋タンパク合成」を最大37%も低下させる

筋トレ後の体は傷ついた筋線維を修復し、筋肉をさらに大きくしようとする「回復モード(同化作用)」に入っています。
しかし、この重要なタイミングでお酒を飲んでしまうと、筋肉を作る作用である「筋タンパク合成」が大きく阻害されてしまうことに。
この事実を決定づけたのが、2014年にオーストラリアのRMIT大学で行われたランダム化比較試験。(※1)
実験では、身体活動の習慣がある男性を対象に、筋トレと有酸素運動を行った後の栄養摂取パターンが筋肉の合成率にどう影響するかを調査しています。
被験者たちはトレーニング後に、以下の3つのパターンで栄養やアルコール(体重1kgあたり1.5g、平均12杯相当の多量摂取)を摂取しました。
- プロテイン(25g)のみを摂取
- アルコール+プロテインを摂取
- アルコール+炭水化物(糖質)を摂取
結果は、プロテインのみを摂取したグループと比較して、3の「アルコール+炭水化物」のグループは筋タンパク合成が37%〜38%も低下。
さらに、「アルコール+プロテイン」を摂取したグループであっても、筋タンパク合成が24%も低下してしまったのです。
つまり…

というのは大きな勘違い。
確かに、プロテインを摂取したグループでは減少率が少しは抑えられていますが、それでも筋タンパク質合成が20%以上も低下してしまうというのは驚くべき結果と言えます。
なぜお酒を飲むと筋肉が分解される?体内で起こる3つのメカニズム
では、なぜアルコールは筋肉の成長を邪魔してしまうのでしょうか。それには、体内で起こる3つのホルモン・代謝メカニズムが関係しています。
1.筋肉の合成スイッチ「mTOR(エムトア)」の働きが抑制されてしまう

筋肉を大きくするためには、細胞内の「mTOR」と呼ばれる酵素(シグナル伝達経路)の働きが重要なカギ。
具体的には筋トレで刺激を与えたり、タンパク質(アミノ酸)の摂取するとmTOR活性化のスイッチが入り、筋肉が作られ始めます。
しかし、アルコールを摂取すると、細胞内のアミノ酸を感知する経路を通じたmTORの働きが阻害されてしまうことに。(※2)
いわば、お酒によって工場がストップさせられるような状態になってしまい、いくら材料となるタンパク質を送り込んでも筋肉が作られにくい状態になってしまうんです。
2.筋肉を増やす「テストステロン」が減少し、分解する「コルチゾール」が増加する

筋肉の成長と分解は、体内のホルモンバランスに大きく左右されます。
2019年に発表された論文でも、アルコール摂取後に筋力やパフォーマンスの低下は見られなかったものの、体内のホルモン環境には明らかな悪化が確認されています。(※3)
具体的には、アルコールを摂取すると筋肉を増やすために重要な男性ホルモン「テストステロン」の分泌量が減少した一方で、ストレスホルモンである「コルチゾール」は増加。
コルチゾールには筋肉を分解してアミノ酸に変換し、エネルギーとして消費しようとする強力な「異化作用(カタボリック)」があります。
つまり、お酒を飲むことで筋肉を作るためのホルモンが減り、逆に筋肉を壊すホルモンが増えるという、ボディメイクにおいては「最悪の体内環境」が出来上がってしまうのです。
3.睡眠の質が低下し、成長ホルモンの分泌が妨げられる

筋肉の修復・成長には、深い睡眠時に分泌される「成長ホルモン」が不可欠。

と寝酒をしている方もいらっしゃるかもしれませんが、それは単に脳が麻痺して気絶しているような状態。
実際には、アルコールは深い睡眠(ノンレム睡眠)の時間を大幅に減少させ、夜中に何度も目が覚めやすくなるなど、睡眠の質を極端に低下させてしまいます。
その結果、成長ホルモンが十分に分泌されず、筋肉の回復・成長が大幅に遅れてしまうことに。
筋肉の合成の度合いはたった1晩の睡眠不足でも大きく落ちると言われており、アルコールによる睡眠の阻害の悪影響は計り知れないものがあります。
特に、筋肉に関係なく寝酒はアルコール依存症のリスクも高めてしまうので、クセになっている方は注意が必要。

という方は寝具を見直したり、リカバリーウェアを利用してみるのもおすすめです。
お酒が筋トレの効果を下げてしまうその他の理由
ホルモンや細胞レベルの悪影響に加えて、アルコールは以下のように体全体のコンディションにもダメージを与えてしまいます。
肝臓の疲弊による「回復の遅れ」

アルコールが体内に入ると、肝臓は有害物質である「アセトアルデヒド」の分解を最優先に行います。
肝臓は本来、エネルギー代謝やタンパク質の合成をサポートする重要な臓器。
しかし、お酒を飲むとアルコールの解毒にリソースを全振りしてしまうため、筋肉の修復のためのエネルギーや栄養が体全体に行き届かなくなってしまいます。
利尿作用による「脱水症状」

アルコールには強い利尿作用があり、飲んだ量を超える水分が尿として排出されてしまいます。
体内の水分が不足して脱水気味になると、血液がドロドロになり血流が悪化。
すると、筋肉に酸素や栄養素がスムーズに運ばれなくなり、筋トレで発生した疲労物質の排出も遅れてしまうことに。
結果として、体の回復に多大な時間を要することになってしまいます。
長期的な飲酒は「サルコペニア(筋肉減弱症)」のリスクを高める可能性も

先述の通り、アルコールの摂取によって「長期的な筋肉の成長」は確実に阻害されてしまいます。
さらに、複数の研究データを統合したメタアナリシスでは、アルコールの消費が加齢に伴う筋肉量・筋力の低下である「サルコペニア」の危険因子となる可能性も指摘されています。(※4)
20~30代の方の場合は回復力も高く、ホルモンの分泌も活発なのであまり気にならないかもしれません。
しかし、長年にわたる多量の飲酒は、将来的な筋肉の減少や健康寿命を縮めるリスクを高めていると言っても過言ではありません。
お酒と筋肉を両立させる!悪影響を最小限に抑えるための3つの対策
ここまでアルコールのデメリットを解説してきましたが

というトレーニーもいるでしょう。
そんな方のために、以下の項目では筋肉の分解を防ぐための賢い飲み方をご紹介します。
1. 飲む量とタイミングを工夫する

筋トレ直後の数時間は、筋肉の合成が最も活発になるタイミング。
そのため、筋肉を育てたいならトレーニングを行った当日は「休肝日」にするのがベストです。
どうしても飲みたいという場合は、筋トレから最低でも1〜2時間は空けるのがおすすめ。
また、飲む量にも注意が必要。一部のデータによると、体重1kgあたり0.5g以下のアルコール(体重70kgの人でアルコール35g=ビール350ml缶を約2本程度)であれば、筋肉への悪影響は比較的少ないとされています。(※3)
とは言え、どのタイミングで飲むにしても筋肉のためには大量飲酒を避け、適量を守ることが絶対条件。
加えて、最近はノンアルコールビールやノンアルコールカクテルといった商品のクオリティも高くなっています。

という方は、筋トレをした日はノンアルコールのドリンクを飲むようにするのもおすすめです。
2.飲む前後に「水分」と「プロテイン」をしっかり補給する

アルコールによる脱水を防ぐため、お酒を飲む前や飲んでいる最中には「チェイサー(水)」をこまめに飲むのがおすすめ。
チェイサーには血中アルコール濃度の上昇を緩やかにする効果があるため、筋肉への悪影響を抑えられます。
また、アルコールの分解には大量のタンパク質(アミノ酸)が必要です。アミノ酸不足に陥ってしまうと、体は筋肉を分解してアミノ酸を確保しようとします。
これを防ぐためにも、飲酒前や食事の際にプロテインや肉・魚・大豆製品などのタンパク質を十分に摂取し、空腹状態でお酒を飲まないように心がけましょう。
3.糖質の少ない「蒸留酒」を選ぶ

ボディメイク中にお酒を楽しむなら、お酒の種類選びも重要。
ビールや日本酒、甘いカクテルなどの醸造酒や混成酒は糖質が多く、余分な脂肪を蓄積sしてしまう原因に。
そのため、ダイエットや筋トレ中の場合は、糖質の少ない焼酎、ウイスキー、ウォッカ、ジンなどの「蒸留酒」を選ぶのがおすすめ。
さらに、ハイボールや水割りにしてゆっくり飲めば肝臓への負担が軽減するだけでなく、カロリーオーバーも防ぎやすくなります。
まとめ:正しい知識を持っていれば、お酒と筋肉は両立できる

紹介した通り、筋トレ後のお酒は筋肉の合成率を大きく低下させ、コルチゾールの増加や睡眠の質の低下によって筋肉の分解を進めてしまう要因になります。
効率よく筋肉を大きくしたいのであれば、トレーニングをした日はできるだけお酒を控えるのが理想的。
しかし「飲む量に気をつける」「筋トレ直後は避ける」「水分とタンパク質をしっかり摂る」「蒸留酒を選ぶ」といったポイントを押さえれば、筋肉へのダメージを最小限に抑えることが可能に。
ボクも元々お酒が好きだったので

という方の気持ちも分かるつもりです。
ぜひ正しい知識を身につけて、理想の体づくりとお酒の楽しみを両立させてください!
参考文献・引用論文
1.Parr EB, Camera DM, Areta JL, Burke LM, Phillips SM, Hawley JA, Coffey VG. (2014) "Alcohol Ingestion Impairs Maximal Post-Exercise Rates of Myofibrillar Protein Synthesis following a Single Bout of Concurrent Training." PLOS One, 9(2), e88384.
2.Laufenberg LJ, Crowell KT, Lang CH. (2021) "Alcohol acutely antagonizes refeeding-induced alterations in the Rag GTPase-Ragulator complex in skeletal muscle." Nutrients, 13(4):1236.
3.Vella LD, et al. (2019) "The Effects of Alcohol Consumption on Recovery Following Resistance Exercise: A Systematic Review." Journal of Human Kinetics, 4(3), 41.
4.Steffl M, Bohannon RW, Petr M, Kohlikova E, Holmerova I. (2016) "Alcohol consumption as a risk factor for sarcopenia - a meta-analysis." BMC Geriatr, 16:99.



