「大胸筋を追い込みたいのに、先に肩や手首が痛くなってベンチプレスができない…」
筋トレにハマり、扱う重量が伸びてきたトレーニーが直面する「関節痛」の壁。

と、ごまかしながら無理やりトレーニングを続けているあなた。
筋肉料理研究家として日夜ボディメイクに励んでいるボクから、あえて厳しい現実をお伝えします。
結論から言うと、痛みを我慢してトレーニングを続けることは、筋肉を成長させるどころか、自らの体を破壊するだけの「自傷行為」です。
じつはボク自身も、右肩のローテーターカフ(回旋筋腱板)が非常に弱く、プレス系の種目をするたびに「インピンジメント症候群」を発症し、その度に絶望していた時期がありました。
しかし、あるアプローチを取り入れたことで今では痛みも感じにくくなり、重量もグーンと伸びるように。
この記事では、最新のスポーツ医学やバイオメカニクスの論文をもとに、なぜ筋トレ中に関節痛が起きるのかを徹底解剖。
さらに、関節を守るための必須ギアもご紹介しているので、肩や手首の痛みに悩んでいる方はぜひ最後までご覧ください!
【目次】
筋肉より先に関節が壊れてしまう「インピンジメント症候群」


この症状に心当たりがある方は、「肩峰下インピンジメント症候群(SAIS)」を引き起こしている可能性が高いです。
人間の肩関節は広い可動域を持つ反面、じつは構造的にはとても不安定。
その不安定な関節を支えているのが「ローテーターカフ(回旋筋腱板)」と呼ばれる4つのインナーマッスルです。
負荷の高いトレーニングを繰り返していると、このローテーターカフが疲労して筋力低下を起こします。
すると、大胸筋や三角筋などのアウターマッスルの強い力に引っ張られて腕の骨の軌道がズレ、肩の屋根にあたる骨(肩峰)と衝突。
結果として、その間にある腱や滑液包が「挟み込まれて(インピンジ)」炎症を起こし、激しい痛みを引き起こしてしまうんです。
「インピンジメントは休めば治る」は大きな間違い!

2025年版の『回旋筋腱板腱炎・臨床実践ガイドライン』をはじめとする多くの整形外科学の文献によれば、「一度弱体化したローテーターカフや、インピンジメントを引き起こす運動パターンは、単に安静にしているだけでは根本的な解決に至らない」のだそう(※1)。
さらに、スウェーデン等の研究機関による論文でも、ローテーターカフの痛みに対しては適切な運動療法によるアプローチが不可欠であると結論付けられています(※2)。
従って、肩の痛みが引いたからといって、原因となるフォームや筋力のアンバランスを放置したままベンチプレスなどの種目を行えば、ケガの再発を招くことに。
つまり、関節の痛みは気合いや根性ではなく、科学的なアプローチで解決する必要があるんです。
なぜボクの右肩の痛みは「ブルガリアンスクワット」で消えたのか?

ボク自身、右肩のインピンジメントに悩まされていたとき、ケーブルやチューブを使ったローテーターカフの強化(特にエクスターナルローテーション)を必死に行っていました。
しかし、じつは痛みから救ってくれたのは、肩のトレーニングではありません。
ボクのインピンジメントが快方に向かったのは、なんと「ダンベルブルガリアンスクワット」のおかげ(もちろん、ローテーターカフのトレーニングも重要です)。

と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、一見すると全く無関係に思えるこの現象こそが、スポーツバイオメカニクスにおける最重要概念「キネティックチェーン(運動連鎖)」の力なんです。
痛みの根本原因は「体幹」と「下半身」の抜けだった
医学誌『PLOS ONE』に掲載された論文をはじめ、多くの研究において「肩の痛みの原因は、実は肩そのものではなく、体幹や下半身の機能不全(キネティックチェーンの破綻)にある」ことが強く指摘されています(※3, ※4)。
また、国内のJ-STAGEに掲載された運動連鎖に関する論文でも、体幹から四肢へのエネルギー伝達の重要性が解説されています(※5)。
土台である体幹の力が弱いと、体は無理やりパワーを出そうとして肩の関節だけを過剰に動かし(代償動作)てしまうことに。
その結果、ローテーターカフに過剰な負荷がかかってしまい、インピンジメントを発症してしまうんです。
「ストラクチュアルエクササイズ」が最強の土台を作る

そこでボクは体幹と股関節周りを強化するため、片脚種目である「ダンベルブルガリアンスクワット」をやり込みました。
ダンベルを両手で持ち、片脚でバランスを取りながら沈み込む動作は、お尻の筋肉だけでなく体幹周りの深層筋を強烈に動員します。
こうして強固な土台が完成したことで、プレス種目の際のキネティックチェーンが正常化。
負荷が右肩に逃げにくくなり、あれほど苦しんだインピンジメントがあっさりと消え去りました。
もちろん、これはブルガリアンスクワットに限定される話ではありません。
重要なのは、脊柱(背骨)に負荷をかけつつ全身の筋肉を連動させる「ストラクチュアルエクササイズ」を取り入れること。
スクワットやデッドリフトなど体幹をフル稼働させる種目であれば、同じように強固な土台を作り上げることが可能(※6)。
ただし、バーベルを順手で握る(オーバーハンドグリップ)種目はインピンジメントを悪化させやすく、特にオーバーヘッドプレスはローテーターカフへの負荷が非常に大きいエクササイズです。
そのため、現在痛みがある方や痛めた経験がある方は、手首の角度を調整できるダンベルやマシンを利用するのがおすすめ。
このように「痛めている関節だけに注目するのではなく、体全体を一つの鎖として捉えて種目を選択する」
これこそが、根本的にケガを克服するための真理なんです。
防御力をグーンと高める!絶対に投資すべき「トレーニングギア」

体幹や下半身の安定性が、肩の痛みを防ぐために重要であることはご理解いただけたかと思います。
しかし、じつはもう一つ、肩への影響が大きい末端パーツが存在します。
それが「手首」。
ベンチプレスやショルダープレスの際、バーベルの重みで手首が後ろに反り返って(背屈)しまっていませんか?
手首が背屈すると前腕の骨から肘、さらに肩関節にかけて不自然なねじれが生じます。
この「手首のエラー」はキネティックチェーンを伝じて、結果的に肩のインピンジメントや肘の痛みを引き起こす可能性があるんです。
ケガをしてからでは遅い!リストラップとベルトは「必須アイテム」
この手首の過剰な反り返りを物理的に防いでくれるアイテム。それが「リストラップ」です。
リストラップで手首を固定すれば、手首から肘、肩へと一直線に力が伝わるようになり、関節への負担が激減します。
ボクが実際に使用しているリストラップグローブについては、以下の記事でもレビューしているので、ぜひチャックしてみてください。
また、先ほど解説した「体幹の安定」を物理的にサポートしてくれるのが「トレーニングベルト(パワーベルト)」。
ベルトを巻いて腹圧を高めることで体幹が丸太のように硬くなり、ストラクチュアルエクササイズにおけるキネティックチェーンの土台が完成します。

なんて遠慮は一切不要。
むしろ、筋肉が未発達でフォームが固まっていない初心者〜中級者こそ、ギアへの投資はケチってはいけません。
ケガをして数ヶ月間トレーニングができなくなる損失を考えれば、数千円のギア代などタダ同然だと言えます。
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慢性痛は脳のエラー!「モーターコントロール」をプロに上書きしてもらえ

ここまで、キネティックチェーンとギアの重要性についてご紹介してきました。
しかし、もしあなたが

という状態であれば、事態は少し深刻。
じつは、痛みを我慢しながら不自然なフォームでトレーニングを続けていると、あなたの「脳」そのものにエラーが起きてしまうんです。
理学療法やリハビリテーション科学の世界においては、人間の動作を制御するシステムは「運動制御(モーターコントロール)」と呼ばれます。
痛みを我慢したまま動作を繰り返していると、脳が痛みを避けるための歪んだフォーム(代償動作)を「正しい動き」として誤って記憶してしまうことに(※7, ※8)。
つまり、長い間痛みを我慢している方は誤った動きが染み付いてしまい、モーターコントロールが正しく機能しなくなっている可能性があるんです。
プロの手を借りて客観的な視点で修正してもらおう!

一度「狂ってしまったモーターコントロール」は、自分自身の感覚だけで修正することはほぼ不可能。
例えば、自分では真っ直ぐバーベルを挙上しているつもりでも、客観的に見てみると肩がすくみ、肘が開いた最悪のフォームになっていることが多々あります。
この呪縛から抜け出し、正しいモーターコントロールを脳に再学習させるための最短の解決策。
それは、解剖学やバイオメカニクスを熟知したプロのパーソナルトレーナーに、客観的な視点からフォームをゼロから作り直してもらうこと。
パーソナルジムやオンラインパーソナルでは、あなたの骨格や関節のクセをプロの目で見極め、どこにエラーが起きているのかを的確に指摘してくれます。
自分一人で痛みと戦いながら時間を無駄にするくらいなら、プロの指導を受けて正しいフォームを手に入れることは賢い選択だと言えるでしょう。
個人的には一般的なダイエットを打ち出しているパーソナルよりは、ちゃんとトレーニングに関する知識を持っているトレーナーが在籍しているジムがおすすめ。
気になるジムがあれば、ぜひホームページやSNSアカウントをチェックしてみましょう。
国際的に信頼性の高いパーソナルトレーナー資格「NSCA-CPT」や「NSCA-CSCS」を有している方がいるかどうかや、実際の指導歴を確認してみるというのも1つの判断材料です。

ということであれば、パワーリフティングやベンチプレスに特化しているジムを探してみるのも良いでしょう。
まとめ:関節を守ることは、理想の筋肉を手に入れるための近道!

「ノーペイン・ノーゲイン(痛みなくして成長なし)」という言葉がありますが、それは筋肉に対する痛みのこと。
関節は筋肉に比べても回復が遅く、また痛めるとトレーニング自体ができなくなることもあるため、絶対に無視してはいけません。
最後に、この記事の重要なポイントをまとめます。
- 肩のインピンジメントは、痛みを我慢しても治らない。
- 痛みの根本原因は「キネティックチェーン」の崩れ。ブルガリアンスクワットなどのストラクチュアルエクササイズが肩を救う。
- 手首のエラーを防ぐリストラップや、体幹を固めるベルトへの投資は必須。
- 慢性化した痛み(狂ったモーターコントロール)は客観的なプロの視点で修正してもらう。
ボク自身、右肩の痛みを乗り越えたことでトレーニングの質、というか筋力の高まり方が劇的に向上しました。
あなたを悩ませているその関節痛も、正しい科学の知識とアプローチがあればきっと克服できるはず。
解説した内容やギアを利用し、ときにはプロの力を借りながら、一緒にケガのないフィットネスライフを突き進んでいきましょう!
参考文献・引用論文
1."回旋筋腱板腱炎: 2025年版臨床実践ガイドライン." Physiotutors.
2."Exercise Therapy for Rotator Cuff Tendinopathy - A Systematic Review" DiVA Portal.
3."Thinking outside the shoulder: A systematic review and metanalysis of kinetic chain characteristics in non-athletes with shoulder pain." (2024). PLOS One.
4.Marine Leroux, et al. (2024). "Relationship between Shoulder Pain, Trunk and Lower Limb Pain in Overhead Athletes: A Systematic Review with Meta-analysis."
5."運動連鎖とエビデンス." J-STAGE.
6.Panjabi MM. (1992). "The Stabilizing System of the Spine. Part I. Function, Dysfunction, Adaptation, and Enhancement." Journal of Spinal Disorders.
7.福本悠樹, 鈴木俊明. (2025). "運動制御理論について ― 運動イメージの役割と理学療法への展望." 愛知県理学療法学会誌.
8."Motor Control Theories in Physiotherapy: Implications for Current Clinical Practice."


