「マシンでずっとスマホをいじっている人がいて迷惑」
といったマナー違反に対する投稿を、SNSで見かけたことのある方も多いのではないでしょうか。
じつは、この「筋トレ中の長時間のスマホいじり」には、単なるマナー違反にとどまらない恐ろしい事実が隠されています。
結論から言えば、インターバル中のスマホは、トレーニングパフォーマンスを大きく低下させてしまう可能性があるんです。
この記事では、スポーツ科学の最新論文をもとに「なぜスマホいじりが筋トレの効果を低下させてしまうのか」を徹底解説。
さらに、「インターバル中に何をすればパフォーマンスを高められるのか」という、正しいリカバリー術もご紹介。
せっかくの努力を無駄にしたくないという方は、ぜひ最後までご覧ください!
【目次】
スマホが筋トレの効果を低下させる?科学的な「3つのデメリット」
じつは、インターバル中にスマホでSNSを見たりゲームをしていると、たとえ体が休まっていても脳は休まっていません。
この項目では、「精神的疲労」と「注意力の分散」が引き起こす、3つの恐ろしいデメリットをエビデンスをもとに解説します。
1.精神的な疲労がトレーニングボリュームを激減させる

それでは、スマホ操作による精神的疲労は、筋トレのパフォーマンスにどれほどの悪影響を及ぼすのでしょうか。
以下で、ブラジル・パライバ連邦大学による実験によって得られたデータをご紹介しましょう(※1)。
この研究では、トレーニング経験のある被験者たちを集め、「15RM(ギリギリ15回持ち上げられる重さ)のハーフ・バックスクワットを3セット行う」という実験を行いました。
その際、被験者を以下の2つの条件に分けてテストを実施しています。
- コントロール条件: トレーニング前にリラックスした状態で過ごす。
- スマホ(精神的疲労)条件: トレーニング前に30分間、スマホでSNSを利用して精神的な負荷をかける。
結果として、スマホを使用したグループは筋肉自体には疲労がないはずなのに、脳がキツいと錯覚してしまい主観的運動強度(RPE)が有意に上昇。
その結果、コントロール条件の被験者たちに比べて、3セット合計の反復回数が【約15%】も低下してしまいました。
筋肥大において最も重要なのは、重量×回数で求められる「総負荷量」。
しかし、インターバル中にスマホを見るだけで脳のストッパーが早くかかり、本来得られるはずだった負荷を手放してしまうことになるんです。
2.自律神経の乱れにより「心拍数の回復」が遅れる

筋トレにおけるインターバルの最大の目的は心拍数を落ち着かせ、筋肉に酸素やATP(エネルギー)を送り届けること。
しかし、スマホから発せられるブルーライトや、SNSなどから流れ込む大量の情報は、脳を興奮させて「交感神経」を刺激し続けてしまいます。
実際に若年層を対象にした研究でも、スマートフォンの過度な使用は、副交感神経(リラックスモード)の働きを示す指標を低下させ、交感神経を優位に保ち続けてしまうことがデータとして示されました(※2)。
つまり、インターバル中にスマホを見ていると「体が興奮状態から抜け出せない」ため、心拍数のリカバリーが遅れてしまうことに。
結果として、息が上がったままの不完全な状態で、次のセットに挑まざるを得なくなってしまうんです。
3.マインドマッスルコネクションが切れ、筋活動レベルが低下する

スポーツ科学において、筋肥大を最大化するためには「マインドマッスルコネクション(MMC:鍛えている筋肉に意識を集中させること)」が極めて重要だとされています。
学術誌『European Journal of Applied Physiology』に掲載された研究では、被験者たちに対してベンチプレスを行う際に「大胸筋(または上腕三頭筋)に意識を集中して動作を行う」よう指示した結果、ただ何となく動作を行った場合に比べて、ターゲットとする筋肉の筋活動レベル(EMG:筋電図振幅)が【約22%】も有意に高まることが証明されました(※3)。
しかし、インターバル中に意識がスマホ画面に向くと、上記のような集中力もプツンと切れてしまうことに。
結果的にMMCも失われ、せっかく重いバーベル・ダンベルを持ち上げても筋肉への刺激が半減してしまうことになるんです。
科学的に正しい「パフォーマンスを高めるためのインターバル術」

と疑問に思われた方に、以下の項目ではボク自身も実践している「科学的に正しいインターバルの過ごし方」をご紹介。
スマホの代わりにこれらを実践するだけで、次のセットの質が劇的に変わるはずです。
1.「深呼吸」で自律神経をリセットする

心拍数のリカバリーを促すために最も有効なのが、「深呼吸」。
特に深呼吸というと吸うことばかりに意識を向けがちですが、「吸う時間の倍くらいの長さをかけて、ゆっくりと息を吐く」ことが大切。
これにより、迷走神経が刺激されて副交感神経が優位になりリラックスモードに。
実際にタイのチェンマイ大学による研究においても、呼吸のコントロールが自律神経のバランスを整え、素早い回復をもたらすことが判明しました(※4)。
インターバル中に目を閉じて深呼吸するだけで、以下で解説する「イメージトレーニング」の準備状態を作ることができるはずです。
2.「アクティブリカバリー」で乳酸を除去する

インターバル中には、「軽く体を動かしてストレッチをする」といったアクティブリカバリー(動的疲労回復)を取り入れるのもおすすめ。
学術誌『Journal of Sport and Exercise Science』に掲載された研究では、激しい運動の後に「座って休む」グループと「軽く体を動かす」グループの疲労回復度を比較しました(※5)。
その結果、座って休んだグループの血中乳酸値は僅かな減少に留まったのに対し、アクティブリカバリーを行ったグループは劇的かつ有意に低下したことが報告されています。
軽く体を動かして血流を促せば、疲労物質も素早く洗い流されることに。
そのため、インターバル中に深呼吸をしながら肩を回したりといった動的なストレッチを行うことは、非常に理にかなった行動なんです。
3.イメージトレーニングで「マインドマッスルコネクション」を高める

インターバル中に呼吸と心拍数が整ってきたら、次のセットに向けた「イメージトレーニング」を行いましょう。
前半でも解説した通り、スマホを見て集中力が切れると、筋肉への神経伝達が薄れてしまう可能性があります。
しかし、逆に言えば「次のセットでは対象筋をしっかり伸ばして、力強く収縮させよう」と頭の中で動きをイメージするだけで、脳から筋肉への神経回路が再構築されるということ。
動作の前にターゲットとなる筋肉への意識を高めておけば、筋活動レベルが有意に向上することは前述の研究でも示されています(※3)。
インターバル中はスマホではなく、自分の体の内側に意識を向ければ、次の1レップの質を高めることができるはずです。
まとめ:今日からインターバル中の長時間のスマホいじりは封印!

じつは、ボクはインターバル中にアプリでトレーニングの記録を取っているので、「筋トレ中に一切スマホを触るな!」とまでは言いません。
しかし、ボクのように記録を取っている人と、SNSや動画を見ている人では明らかに様子が異なりますし、体に与える影響も違います。
当の本人は気付いていないかもしれませんが、他人からすればその違いは一目瞭然。
記事でも解説した通り、インターバル中のスマホは精神的疲労や心拍数の回復の遅れ、さらには集中力の低下を招いてしまいます。
筋トレはさまざまなポジティブな効果が得られますが、上記のような状態で器具を扱っていれば、手元が狂って重大な事故を起こしてしまう可能性も。
従って、あなた自身はもちろん、他のトレーニーの安全を守るためにも、インターバル中の長時間のスマホいじりは絶対にNG。
「ついスマホを触ってしまっている」という方は、ぜひ次のトレーニングからはパフォーマンスレベルを高めるためのインターバル術を試してみてください!
参考文献・引用論文
1.Dynamic Eye. "Mental Fatigue From Smartphone Use Reduces Volume-Load in Resistance Training: A Randomized, Single-Blinded Cross-Over Study."
2.Assessment of Heart Rate Variability in Young Adults with Smartphone Overuse - Impactfactor.
3.Calatayud, J. et al. (2016). "Importance of mind-muscle connection during progressive resistance training." European Journal of Applied Physiology, 116(3), 527-533.
4.Sa-Nguanmoo P, Pratanaphon S, Parameyong A, Chawawisuttikool J, Shinlapawittayatorn K, Chattipakorn N, Chattipakorn SC. Inspiratory muscle training improves heart rate variability and respiratory muscle strength in obese young adults. PLoS One. 2025 Aug 20;20(8):e0329623.
5.Rabbani, M. A., et al. "Physiology of Responses to Active and Passive Recovery Strategies After Maximal Exercise: A Study in Track and Field Athletes." JSES: Journal of Sport and Exercise Science.

